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代表の岩澤が日本広報学会で主査を務めた「武力紛争下のコミュニケーション」研究について、「月刊広報会議5月号(2023年4月1日発売)」に記事が掲載されました。

2023年4月3日

紛争時の広報は平和をめざすコミュニケーションとなりえるか

代表の岩澤が日本広報学会で主査を務めた「武力紛争下のコミュニケーション」研究について、「月刊広報会議5月号(2023年4月1日発売)」に記事が掲載されました。


全文は以下。


「武力紛争下のコミュニケーション」研究

紛争時の広報は平和を目指すコミュニケーションとなりうるか


日本広報学会2022年度の研究助成をうけて発足した「武力紛争下のコミュニケーション」研究(主査は筆者、共同研究者は国枝智樹上智大学准教授)は当然、2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻への直接的な反応でもあった。


ただし筆者は、米大学院で平和学や紛争解決法をコミュニケーションやジャーナリズムの視点から専門的に学び、修めた後、エジプ ト、シリア、南スーダンなどで勤務、いまはコミュニケーションや広報PRのコンサルティングをしている。本研究への着手はごく自然なものだった。


主に実務面から広報と相対している筆者と、主に学術面からの国枝氏との議論は、戦争という極限的な社会状況下で広報はいかなる役割を担うのか、担うべきなのかという、ウクライナ侵攻を前にし た「いま」「ここ」での事実関係の 把握と、規範的な期待とのはざまで、揺れ動いてきた。


戦時下の広報の立ち位置


歴史的にプロパガンダと紙一重、 あるいはそのものとして戦時下で利用されてきた広報が、ソーシャルメディアやデータ加工技術が発 達した現代において、どのような様相を呈するのか。過去よりさらに手ごわく、技術的にも見抜きにくい武力紛争を煽るプロパガンダとしてか。あるいは、ジャーナリズムと手をとり合い、クリエイティブな手法で平和の回復、創出を目指す、平和とよりよき未来のためのコミュニケーションとしてか。


本研究ではまず、国内外の報道のなかに、どれほどPR会社につい ての言及があるのか、定量・定性 的な分析を行った。筆者は実務面から、開戦直後PR会社がどのような施策を行っていたかを調査。国枝氏は、従来から研究蓄積があった広報の歴史やプロパガンダ、広報産業論の観点から、調査・分析 を続けた。


筆者はパブリックアフェアーズ、およびPRコンサルティング会社であるマカイラ(千代田区・麹町) に参画している。ウクライナ侵攻 の時には、筆者自身が、それに対して会社としての声明を発する際 の検討にも携わった。調査の結果分かったのは、海外の動きに比し て、国内企業の動きはかなり鈍いことだった。このことは、論文内容を先出しして記しておきたい。


人類史全般の調査を視野に


本研究の成果として、2022年10月に東日本国際大学(福島県・ いわき市)でハイブリッド開催された第28回研究発表全国大会で、 研究成果を発表した。また学会誌 『広報研究』の最新号掲載に向けて、 査読制度を通過した学術論文を上梓している。


無論、武力紛争下のコミュニケ ーションとは、ウクライナ侵攻に限定して語られるべきものではない。そのような限定的な現象をとらえるだけでは、広く人類史全体にわたって繰り広げられてきた組織的暴力とコミュニケーションとの協奏を捉えそこなうに違いない。他の戦争、内戦、武力紛争も視野に入れるべきだろう。20世紀前半にその成立を迎えたといわれる広報産業にとどまらず、より広範囲 のコミュニケーション活動全般を射程にとらえる必要も感じている。


ともあれ、ウクライナ侵攻から1年が過ぎた(執筆当時)。本日夕刊の一面見出しは「ロシアの勝利 はない」とのバイデン米大統領の発言も。「武力紛争下のコミュニケーション」研究からは、まだま だ離れられそうにない。


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